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膵臓の働きと膵臓がん

著名人が膵臓がんで亡くなったニュースを見て、自分はかかりたくないと感じたけれどそもそも何に気を付ければよいかわからず困っている人はいませんか?

この記事では膵臓の働きから膵臓がんの予防策まで詳しく解説します。

膵臓とは

膵臓の働きと膵臓がん

膵臓は、焼肉ではシビレとも呼ばれる胃の後ろにある20cmほどの細長い形をした内臓で、次の2つの役割があります。

  1. 食べ物を消化する膵液を作り十二指腸に送る
  2. 血液中の糖分の量を調節するホルモンを作り血液の中に送り出す

膵液には以下の消化酵素が含まれているため、栄養素を分解して吸収しやすい状態にすることが可能です。

  • タンパク質分解酵素
  • 脂質分解酵素
  • 糖質分解酵素
  • 核酸分解酵素

膵液は弱アルカリ性の透明な液体で、1日に約500〜800ml分泌すると言われています。

また膵臓の中にあるランゲルハンス島という細胞の集まりでは、血液中の糖分を増やすホルモンのグルカゴン、減らすホルモンのインスリンが作られます。

日本における膵臓研究の歴史

膵臓の働きと膵臓がん

画像出典:川崎医会誌「解体新書に描かれた図譜の現代解釈 肝胆膵編」

江戸時代初期、人間の内臓は東洋医学で5つの臓器(肝臓・心臓・脾臓・肺臓・腎臓)と6つのご腑(はらわた=大腸、小腸、胆、胃、三焦、膀胱)からなる「五臓六腑」説が有力でした。

しかし江戸時代の医師杉田玄白はオランダの医学書「ターヘル・アナトミア」を携えて腑分け(解剖)に臨み、その正確さに驚いて翻訳を決意します。

ターヘル・アナトミアを日本語訳したのが「解体新書」ですが、解剖してもなかなか見つけることができなかった膵臓についても詳しく解説してあり、画像のような図譜が掲載されていました。

現在画像で知られている膵臓の形と比較すると少しいびつでゆがんで見えますが、これは当時遺体の保存技術がなかったため、標本の形状をそのまま描写したためだと言われています。

人間と動物の膵臓の違い

人間と動物では、膵臓の数に以下のような違いがあります。

分類膵臓の個数概要
哺乳類(人間・犬・猫・馬・牛・ウサギなど)1個基本的に1つの膵臓を持つ
鳥類(ニワトリ・ハト・フクロウなど)1個 または2個種類によって膵臓が2つに分かれることがある
両生類(カエル・イモリなど) 1個基本的に1つの膵臓を持つ
爬虫類(ヘビ・カメ・トカゲなど)1個形が細長かったり、散らばるように配置されることもある
魚類(サメ・タイ・ナマズなど)1個または分散した膵組織一部の硬骨魚やサメでは、膵臓がはっきりと1つの形を持たず、小さな組織が点在することがある

同じ膵臓でも人間と動物で個数やその形が少しずつ異なるのがわかります。

膵臓の働き

前の項目で膵臓には、以下の2つの働きがあると説明しました。

  1. 食べ物を消化する膵液を作り十二指腸に送る
  2. 血液中の糖分の量を調節するホルモンを作り血液の中に送り出す

①の働きは膵液を十二指腸という外界に送るため外分泌機能、②の働きはホルモンを血液中という内界に送るため内分泌機能と呼ばれます。

そして外分泌をする組織が外分泌腺(腺房)、内分泌をする組織が内分泌腺(ランゲルハンス島)です。

外分泌腺の働きは以下の通りです。

  • 胃液で酸性になった食べ物を中和
  • 炭水化物、タンパク質、脂肪を分解

一方、内分泌腺の働きは次の通りです。

  • 血液中の糖分を増やすホルモンのグルカゴンを分泌する
  • 血液中の糖分を減らすホルモンのインスリンを分泌する
  • さまざまなホルモンの分泌や消化管機能を抑制するソマトスタチンを分泌する

これらのことから、膵臓は食べ物の消化を助け血糖値の調整をする働きがあるとわかりま

す。

歴史から見る日本人と欧米人の膵臓の働きの違い

日本人は元々が農耕民族、欧米人は狩猟民族です。

日本人は米、魚、野菜などの低脂肪食が主だったため、インスリンの分泌量がそれほど多くなくても対応でき、膵臓のサイズが小さいのが特徴的です。

一方、欧米人は肉などの高脂肪食を食べてきたため、インスリンの分泌量が日本人と比較すると50%~70%多く、膵臓のサイズも大きめです。

現在では日本人の食生活は高脂肪食へと変化しているため、インスリンを分泌する膵臓への負担が大きくなり、膵臓由来の糖尿病などが増加しています。

糖尿病を予防するためにも、日本人にとっては膵臓に負担をかけにくい和食中心の食生活をするのが大切です。

参考:米穀機構米ネット「テーマ:『ごはん食で糖尿病を防ごう!』」

膵臓にまつわる病気

膵臓にまつわる病気には、以下のようなものがあります。

項目分類概要
膵炎(急性・慢性)炎症系・膵臓に炎症が起こる
・急性膵炎は激しい腹痛や嘔吐を伴い、慢性膵炎は長期的に膵臓がダメージを受ける
・アルコールや胆石が主な原因
自己免疫性膵炎炎症系・免疫の異常によって膵臓に慢性的な炎症が起こる
・ステロイド治療が有効とされる
膵臓がん(膵癌)腫瘍系・進行が速く発見が難しい悪性腫瘍
・特に「膵管がん(膵管腺がん)」が多く、黄疸や体重減少が症状として現れる
・早期発見が難しいため予後が悪い
膵嚢胞(すいのうほう)腫瘍系・膵臓内に液体が溜まる袋状の病変
・良性のものもあるが、一部はがん化する可能性がある
膵のう胞性腫瘍(IPMN・MCNなど)腫瘍系・IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)やMCN(粘液性嚢胞腫瘍)など、膵臓にできる嚢胞性の腫瘍
・がん化するリスクがあるため、経過観察や手術が必要な場合もある
膵外分泌機能不全機能不全系・膵臓の消化酵素分泌が低下し、脂肪の消化吸収が悪くなる
・慢性膵炎や膵がんが原因で起こることが多い
糖尿病(膵臓由来)機能不全系・インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が破壊されることで発症する
・1型糖尿病は自己免疫が原因、2型糖尿病は生活習慣病として発症する

あまり耳慣れない病気が多いかもしれませんが、膵臓由来の糖尿病、膵臓がんなどは日頃から特に注意が必要な病気だと言えるでしょう。

膵臓がんについて

膵臓の働きと膵臓がん

画像出典:がん統計「膵臓」

国立研究開発法人国立がん研究センターが運営する「がん統計」で、膵臓がんの罹患数と死亡数を調査した結果、1975年の調査開始に5,000人だった死亡数が2023年では約10倍の40,000人に増加していることがわかりました。

膵臓がんの主な症状には以下のようなものがあります。

  • 腹痛
  • 体重減少
  • 黄疸
  • 嘔吐

CT検査かMRI検査を行った後、状態に応じて内視鏡検査や超音波内視鏡検査をして診断します。

しかし前の項目でもご紹介した通り、進行が早く発見が難しいのが膵臓がんの特徴です。

がんが転移していなければ手術で根治できる可能性があるのを覚えておきましょう。

膵臓がんについて、早期発見する方法、チェックリスト、予防、知っておきたいデータの4つの観点からさらに詳しくご紹介します。

参考:MSDマニュアル家庭版「膵臓がん」

早期に見つける方法

膵臓がんを早期に発見するには、以下のような方法があります。

項目概要
腫瘍マーカー(血液検査)CA19-9・Span-1・DUPAN-2・CEA・CA50などの値をチェックする検査方法
腹部超音波検査(腹部エコー)プローブと呼ばれる端子を腹部にあてて、臓器に反射した超音波を画像にして観察・診断する検査方法
腹部CT検査X線を使って身体の断面を撮影し検査する方法
腹部MRI検査磁力を使って病変や臓器の状態を画像化して検査する方法
MR胆膵管撮影(MRCP)MRI検査時に膵臓がんが発生しやすい膵管と、胆道がんが発生する胆管や胆嚢を同時に撮影する検査方法
超音波内視鏡検査(EUS)口から超音波内視鏡を胃の中に挿入し、胃壁や十二指腸壁にエコーを当てて膵臓を観察する検査方法。
内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)口から十二指腸まで内視鏡を挿入し、胆管や膵管に造影剤を注入して治療、診断をする方法

膵臓がんは早期に発見するのが重要であるため、以下のような検査方法の研究も行われています。

  • 血液中のマイクロRNAという遺伝子の、膵臓がんによる変異を見つける検査方法
  • AIを活用した診断の支援
  • 従来の腫瘍マーカーよりも精度の高いバイオマーカーの研究

膵臓がんが進行しないうちに発見するためにも、普段から検査を受ける姿勢が大切です。

膵臓がんのチェックリスト

膵臓の働きと膵臓がん

画像出典:日本膵臓学会「膵癌のリスクファクターとは何か? 」

日本膵臓学会では、膵臓がんのリスクファクター(危険因子)には上記画像のようなものがあるとしています。

家族歴、合併疾患、嗜好などのリスクファクターが複数ある人は、膵臓がんのリスクが高くなるため検査をするのが望ましいのです。

また膵管内乳頭粘液性腫瘍と膵嚢胞にかかったことがある人も、前がん病変の可能性があるため慎重な経過観察が必要です。

参考:日本膵臓学会「膵癌のリスクファクターとは何か? 」

膵臓がんを予防するには?

国立研究開発法人国立がん研究センターが運営する「がん情報サービス」では、がん全般の予防には以下のようなことが役立つと呼びかけています。

  • 禁煙
  • 節度のある飲酒
  • バランスの良い食事
  • 身体活動
  • 適正な体形の維持
  • 感染予防

そして特に男性の場合、膵臓がんの予防に禁煙が効果的だとしているのです。

参考:がん情報サービス「膵臓がん予防・検診」

参考:がん情報サービス「科学的根拠に基づくがん予防」

膵臓がんで知っておきたい情報

膵臓がんについて知っておきたい情報を5つご紹介します。

5年生存率

膵臓の働きと膵臓がん

参考:全国がん登録罹患数・率報告:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]

膵臓がんのステージごとの5年生存率は、概ね以下の通りです。

ステージ5年生存率概要
ステージI(限局性)約20~30%・腫瘍が膵臓内にとどまっている段階。
・手術が可能であれば比較的良好な予後。
ステージII(局所進行)約10~20%・腫瘍が膵臓の外へ広がっているが、手術可能なケースもある。
ステージIII(局所進行がん)約5~10%・主要な血管に浸潤し、手術が難しい段階。
・化学療法や放射線療法が主な治療。
ステージIV(遠隔転移)約1~5%・他の臓器(肝臓、肺など)に転移がある。
・根治的な手術は難しく、化学療法が中心。

参考:国立研究開発法人国立がん研究センター「院内がん登録 2014-2015 年 5 年生存率集集計」

統計の中では5年生存率が低いのが目を惹きますが、5年生存率とは、あるがんと診断された人のうち5年後に生きている人の割合が、日本人全体で5年後に生きている人の割合と比べてどのくらい低いかで表される数値です。

上記のデータから、膵臓がんでは8.5%の人しか治療で命を救えないということがわかります。

このことから、膵臓がんはかかる前に予防するのがとても重要だと言えるでしょう。

部位別がん死亡数

膵臓の働きと膵臓がん

画像出典:がん情報サービス がん種別統計情報「膵臓」

がん情報サービスが公開した2023年における部位別がん死亡数の男女別データです。

すべてのがんの中で膵臓がんの死亡数は男性では4位、女性では3位と上位を占めています。

このデータからも膵臓がんは予防がとても大切だとわかります。

年齢階級別死亡率

膵臓の働きと膵臓がん

画像出典:がん情報サービス がん種別統計情報「膵臓」

年齢階級別死亡率とは、年齢ごとに算出された死亡率のことです。

膵臓がんでは男女両方とも年齢が高くなるにつれて死亡率が上昇する傾向にあるため、高齢者は特に膵臓がんの予防に積極的に取り組むのが望ましいでしょう。

参考:がん情報サービス がん種別統計情報「膵臓」

まとめ

膵臓には、食べ物を消化する膵液を作り十二指腸に送る役割と、血液中の糖分の量を調節するホルモンを作り血液の中に送り出す役割の2つがあります。

食べ物の消化を助け血糖値の調整をする働きをするため、日頃から暴飲暴食や運動不足を避け、膵臓に負担をかけすぎないように心がけるのが大切です。

膵臓の健康を維持することは生活習慣病の予防にもつながるため、この記事も参考にして膵臓に優しい生活に取り組んでみてください。

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