過敏性腸症候群とは?症状から治し方まで詳しく解説
この所ガスでお腹が張っているし、下痢や便秘も続いているけれど、どうしてこのような症状が続くのかわからずに困っている人はいませんか?
この記事ではそんな人に知ってほしい、過敏性腸症候群について詳しく解説します。
目次
過敏性腸症候群とは?
著作者:jcomp/出典:Freepik
過敏性腸症候群とは正常な腸の機能である腸の運動や神経の感受性、脳がこれらの機能の一部をコントロールできなくなる病気です。
過敏性腸症候群は次の4つに分類されます。
項目 | 概要 |
便秘型過敏性腸症候群(IBS-C) | ・硬便か兎糞状便が便形状の25%より多く、軟便と水様便が便形状の25%未満 |
下痢型過敏性腸症候群(IBS-D) | ・軟便か水様便が便形状の25%より多く、硬便と兎糞状便が便形状の25%未満 |
混合型過敏性腸症候群(IBS-M) | ・硬便か兎糞状便が便形状の25%より多く、軟便と水様便が便形状の25%より多い |
分類不能型過敏性腸症候群(IBS-U) | ・便形状の異常が不十分であって、IBS-C、IBS-D、IBS-Mのいずれでもない |
便の形状によって分類が変わるのですが、便の形状は次のように定義づけられています。
項目 | 概要 |
硬便 | ・小塊が融合したソーセージ状の硬便 |
兎糞状便 | ・小塊が分離した木の実状の硬便で通過困難 |
軟便 | ・不定形で辺縁不整の崩れた便 |
水様便 | ・固形物を含まない水様便 |
健康な便は平滑でやわらかいソーセージのような状態の便なので、過敏性腸症候群の人の便は水分量が極端に多かったり少なかったりするのがわかるでしょう。
また世界の過敏性腸症候群の有病率は次の通りです。
年代 | 有病率 |
1981年~1990年(6研究11,000人) | 10.0% |
1991年~2000年(33研究639,000人) | 12.0% |
2001年~2010年(38研究160,000人) | 10.9% |
過敏性腸症候群にかかる人が大きく増加しているわけではないものの、減少もしているわけではないため、症状や予防方法について正しい知識を持つのは重要なことだと言えるでしょう。
参考:日本消化器病学会ガイドライン「過敏性腸症候群(IBS)」
過敏性腸症候群の原因
過敏性腸症候群の原因ははっきりとわかっていませんが、次のようなことが関連したり、きっかけとなったりしているのではないかと考えられています。
- 高カロリーや高脂肪の食事
- 小腸で吸収されにくい炭水化物を含む食事(小麦、乳製品、豆類、チョコレート、お茶、一部の人工甘味料、アスパラガス、ブロッコリー、あんずなど)
- 急いで食事を摂る
- 長い間何も食べないでいたのに急に食事を摂る
- 感情的な要素(ストレス、不安、抑うつ、恐怖など)
- 身体的なストレス
- 下剤の使用
上記のようなことを普段していても必ず症状が出るわけではありません。過敏性腸症候群との関連性は、未だにはっきりとは解明されていないため、気になる人は避けておくのが望ましいでしょう。
参考:一般社団法人日本大腸肛門病学会「過敏性腸症候群について」
過敏性腸症候群の症状
過敏性腸症候群は青年期から20代に発症する傾向があり、成人後期で発症が少なくなります。
また一度かかると「症状の発作を起こしては治まる」サイクルが不定期に繰り返される特徴があるのです。
なお、過敏性腸症候群の主な症状は次の通りです。
- 排便に伴う腹痛(下腹部痛で継続する鈍痛、けいれん痛)
- 排便することで緩和する腹痛(下腹部痛で継続する鈍痛、けいれん痛)
- 腹部のふくらみ
- 便に粘液が混じる
- 排便後の残便感
- ガス
- 吐き気
- 頭痛
- 疲労
- 抑うつ
- 不安
- 筋肉痛
- 睡眠障がい
- 集中力の低下
身体的な症状だけではなく、一定数メンタル面の症状もあるのが特徴的だと言えるでしょう。
過敏性腸症候群の治し方
過敏性腸症候群を治療するには「なぜ今の症状が出ているのか」を理解して規則正しい生活を送り、排便のリズムを整える方法が前提となります。
この前提を守った上で、知っておきたい過敏性腸症候群の治し方を3つご紹介します。
参考:一般社団法人日本大腸肛門病学会「過敏性腸症候群について」
食事
過敏性腸症候群の分類や症状別に、食事についての留意点をご紹介します。
項目 | 概要 |
共通 | ・1回の食事の量を減らして回数を増やす ・チューインガムなどに含まれるソルビトールを大量に摂取しない ・果物などに含まれる果糖の摂取を控える ・乳製品を過度に摂取しない |
便秘型過敏性腸症候群(IBS-C) | ・食物繊維と水の摂取量を増やす |
下痢型過敏性腸症候群(IBS-D) | ・低脂肪食や消化の良い食べ物を摂る |
腹部のふくらみやガスの症状がある人 | ・豆類やキャベツなど消化しにくい食べ物を控える |
過敏性腸症候群の人は排便時に下腹部痛などの症状が出ることから、食事を怖いと感じてしまいがちですが、症状に合った食べ物を選ぶことが治療の第一歩だと意識してください。
薬
過敏性腸症候群の分類や症状別に、主に治療に使われる薬をご紹介します。
項目 | 薬の名前 |
便秘型過敏性腸症候群(IBS-C) | ・下剤 ・便の水分量を調節するポリカルボフィルカルシウム ・腸管の管腔表面にあるグアニル酸シクラーゼC受容体を活性化させることで便秘や腹痛を改善するリンゼス |
下痢型過敏性腸症候群(IBS-D) | ・下痢止め薬 ・便の水分量を調節するポリカルボフィルカルシウム ・体内神経伝達物質セロトニンの作用を抑えることで下痢や腹痛を改善するイリボー |
混合型過敏性腸症候群(IBS-M) | ・便の水分量を調節するポリカルボフィルカルシウム |
下痢、腹部のふくらみ、腹痛の症状がある人 | ・アンモニアを産生する腸内細菌に対して抗菌作用があるリファキシミン |
腹痛、下痢、腹部のふくらみ、睡眠障がい、抑うつ、不安の症状がある人 | ・抗うつ薬 |
薬による治療は薬の選び方と量の調節が重要になるので、医師とよくコミュニケーションを取りながら進めていくことが大切です。
その他の治療
過敏性腸症候群にはメンタル面に影響を及ぼしかねない症状があるため、認知行動療法、精神療法、催眠療法などが用いられる場合があります。
日本では長らく心理療法についての国家資格が存在せず、多数の民間資格が混在する状態が続いていました。しかし2017年9月に施行された公認心理師法に基づく公認心理師が国家資格となったのです。
この公認心理師法の改正により資格を持つ人や、1988年より実績を積み重ねて社会的に認知されている臨床心理士の資格を持った心理職への受診が望ましいでしょう。
また過敏性腸症候群の治療としてペパーミントオイル、ハーブ、鍼治療、ヨガなどが行われる場合があります。しかしこれらの補完療法は科学的根拠(エビデンス)が少ないことを理解した上で取り入れるようにしてください。
参考:厚生労働省eJIM「過敏性腸症候群と補完療法について知っておくべき7つのこと」
過敏性腸症候群が疑われる症状があれば多聞内科クリニックへご相談ください
前の項目でご紹介したような、過敏性腸症候群が疑われる症状があれば、まずは多聞内科クリニックの消化器内科までご相談ください。
消化器内科では、主に口から肛門までの消化管(食道・胃・小腸・大腸)、肝臓、胆のう、すい臓の病気を専門に扱っています。まだ原因がよくわからない過敏性腸症候群でも、できるだけ一人ひとりに合った治し方を寄り添って考えることができます。
事前にインターネットや電話で予約をしていただけるとスムーズにご案内ができますので、心配な方はぜひ一度ご相談ください。
消化器内科 | 高崎市の多聞内科クリニック (tamon-naika.com)
まとめ
過敏性腸症候群とは、正常な腸の運動、神経の感受性、脳などのコントロール機能が一部で損なわれる病気です。まだ原因がはっきりとわからない病気であるからこそ、疑わしい症状があれば早めの受診を心がけましょう。
この今回の記事も参考にし、ぜひ過敏性腸症候群について理解を深めてみてください。