膵臓とアルコールの関係とは?膵臓が悪いと出る症状から休ませる方法まで詳しく解説
年末年始にかけて会社の飲み会がどうしても増えるけれど、体調がちゃんと管理できるかどうか少し心配だという人はいませんか?
この記事では、膵臓とアルコールの関係から膵臓を休ませる方法まで詳しく解説します。
目次
膵臓とは?
出典:@tirachardz
膵臓とは、脊椎動物が持つ器官で人間の場合は胃の後ろ側にあり、細長い形をしていて長さは15cm~20cmほどです。
膵臓の働きとしては、食べ物を消化する働きのある膵液を1日に500ml~800ml程度作って十二指腸に送る役割と、血液中の糖分の量を調節するホルモン(増やすグルカゴンと減らすインスリン)を作って血液の中に送る役割を果たし、肝臓と並んで「沈黙の臓器」と呼ばれています。
アルコールを飲む人全てが膵炎になるわけではありませんが、膵炎になる原因の1つにアルコールの飲みすぎが挙げられます。
参考:中外製薬「すい臓」
膵臓が悪いと出る症状
膵臓が悪いと出る症状には急性膵炎と慢性膵炎があります。
2022年に厚生労働省が発表した患者調査では、急性膵炎と慢性膵炎の患者数は次のように推移していることがわかりました。
病気の種類 | 1984年 | 1993年 | 2008年 | 2017年 | 2020年 |
急性膵炎 | 6,000人 | 4,400人 | 2,500人 | 2,300人 | 2,400人 |
慢性膵炎 | 6,300人 | 9,700人 | 3,800人 | 3,400人 | 2,600人 |
急性膵炎は1980年代から1990年代にかけて半分以下に患者が減り、慢性膵炎も2020年代になってから1980年代の半分以下に患者数が減少しています。
急性膵炎と慢性膵炎はどのような病気なのかをそれぞれご紹介します。
参考:厚生労働省「令和2年患者調査 傷病分類編(傷病別年次推移表)」
急性膵炎
急性膵炎とは膵液に含まれる消化酵素により膵臓が溶けてしまい、炎症が膵臓や関連する器官に起こる病気です。
軽度、中等度、重度どれでも通常は入院が必要になります。
原因
急性膵炎の主な原因は次の3つです。
急性膵炎の原因 | 概要 | 割合 |
胆石 | ・胆石は胆嚢内で固形物が凝縮したものだが、膵臓と胆嚢が共用している総胆管の中に入り管を詰まらせることがある ・総胆管が詰まると膵液の流れが止まり、消化酵素が膵臓内に溜まって膵臓を溶かしてしまい炎症を引き起こす | 40% |
アルコール | ・アルコールがどのように急性膵炎を引き起こすのかはまだ十分には解明されていない ・急性膵炎の発症リスクはアルコール摂取量ともに高まるが、アルコール摂取の頻度が高い人でも急性膵炎の発症割合は10%未満 | 30% |
その他の原因 | ・遺伝(一部の患者) ・嚢胞性線維症の人や嚢胞性線維症の遺伝子を持つ人は発症リスクが上がる ・薬の副作用(薬の使用を中止すると治る) ・ウイルス(通常は長引かない) | ー |
十分にその内容は解明されていないものの、アルコールも急性膵炎を引き起こす原因の1つにはなっているため、飲みすぎには注意した方がよいでしょう。
症状
急性膵炎では、主に次のような症状が起こります。
- 上腹部の激しい腹痛や腫れ
- 吐き気
- 汗をかく
- 脈が速くなる(通常1分間に60回~100回の脈拍が100回~140回ほどになる)
- 呼吸が浅く、速くなる
- 体温が37.7度~38.3度に上昇する
- 白眼の部分が黄色く変色する
この中で腹痛はほぼ全員に見られる症状で、痛みが激しいため鎮痛剤でも完全に痛みを取り除くのが難しい場合があります。
前の項目でもご紹介した通り軽度、中等度、重度どれでも入院が必要で、もし放置すると再発を繰り返したり、重度の合併症を引き起こして命の危険が生じたりする場合があります。
上記のような急性膵炎を疑う症状が出た場合、まずは早急に受診しましょう。
治療
急性膵炎の治療の内容を軽度・中等度・重度の場合に分けてご紹介します。
項目 | 概要 |
軽度 | ・短期間入院して点滴 ・鎮痛薬を飲む ・膵臓を休ませるために絶食 ・吐き気、嘔吐、激しい痛みがなければ脂肪が少なく消化しやすい食事をする |
中等度 | ・軽度よりは長期間の入院をして点滴 ・食べられない場合は経管栄養か経腸チューブ栄養で栄養補給 ・痛みや吐き気は薬を静脈から入れてコントロール ・感染の兆候があれば抗菌薬で治療 |
重度 | ・集中治療室でバイタルサインと尿量がモニタリングされる ・可能であれば経管栄養、難しければ静脈カテーテルから栄養補給 ・胆石が原因の急性膵炎で胆石が自然に排出されない場合は胆石を除去する ・感染症は抗菌薬で治療するが開腹手術が必要な場合もある |
重度になると集中治療室での治療を受けなければならず回復への道が険しくなるので、急性膵炎の兆候を見逃さず早めに治療に取り組むのが大切だとわかります。
参考:MSDマニュアル家庭版「急性膵炎」
慢性膵炎
慢性膵炎とは長期間にわたって続く膵臓の炎症のことで、膵液に含まれる消化酵素を分泌する細胞が次々に壊れてしまい、膵臓機能の低下を引き起こしてしまいます。
原因
慢性膵炎の主な原因は次の3つです。
慢性膵炎の原因 | 概要 |
アルコール | ・大量のアルコール摂取が原因となる |
喫煙 | ・慢性膵炎の発症リスクが高まる |
その他 | ・嚢胞性線維症、遺伝性膵炎、自己免疫性膵炎などの遺伝性疾患 ・重症の急性膵炎の発作による線維化の発生 ・膵管が結石や腫瘍で詰まる ・明らかな原因がない(特発性と呼ぶ) |
大量のアルコール摂取も慢性膵炎の原因の1つとなっているため、飲みすぎには気を付ける必要があります。
症状
慢性膵炎の主な症状は次の通りです。
- 上腹部の腹痛(痛みの強さが変化する)
- 膵機能不全(膵液に含まれる膵酵素の量が減り食べ物をうまく消化できなくなる)
- 低栄養
- 体重の減少
放置すると栄養状態が少しずつ悪化していき、膵臓がんのリスクも高くなります。
そのため慢性膵炎の治療を早めに行うのは、膵臓がん予防にも効果的とされているのです。
治療
慢性膵炎の治療方法を3つご紹介します。
項目 | 概要 |
痛みのコントロール | ・鎮痛薬の投与 ・脂肪分の少ない食事を1日4回~5回に分けて摂る ・狭窄の解消や詰まった管から溜まった液体を排出して痛みを取るための内視鏡治療 ・衝撃波で結石を砕いて痛みを取る砕石術・外科手術 |
膵酵素のサプリメント | ・膵酵素の分泌を減らすことで痛みを抑える ・安全で副作用もほとんどないが十分に痛みを抑えられない場合もある |
糖尿病の管理 | ・慢性膵炎でインスリンを分泌する膵臓の細胞が破壊されると糖尿病になる場合がある ・血糖降下薬の投与 ・インスリンでの管理 |
慢性膵炎にかかると、原因がアルコールではなくても飲酒とタバコは控える必要があるのを覚えておきましょう。
膵臓を休ませる方法とは?
急性膵炎や慢性膵炎を予防するには膵臓を休ませなければなりませんが、どのような方法があるのでしょうか。
膵臓を休ませるとは膵臓に負荷をかけすぎないという意味で、これが膵臓の機能を低下させないことにもつながります。
膵臓に負荷をかけすぎずに生活する方法を3つご紹介します。
暴飲暴食を控える
度を越えた暴飲暴食は膵臓に負担をかけてしまうため、3食できるだけ決まった時間に食べるよう心がけましょう。
暴飲暴食の中でも、特に自分がしてしまっていないか見直してほしいのは次の3つです。
- アルコールの飲みすぎ
- 食べ過ぎ
- 刺激物の摂りすぎ
厚生労働省では21世紀における国民健康づくり運動として「健康日本21」というページで情報発信をしていますが、この中で「節度ある適度な飲酒」を1日あたり約20g程度と定めています。
ビールなら1日中瓶1本、日本酒なら1合が目安の量となるのでまずこの基準を守ることから始めてみましょう。
参考:厚生労働省「アルコール」
規則正しい生活をする
規則正しい生活をすることも、膵臓への負荷を減らすことにつながります。
今まで起きる時間も寝る時間もばらばらだったので何から始めたらよいかよくわからないという人もいるかもしれませんが、まず寝る時間を決めてその時間には布団に入るようにしてみましょう。
もしすぐには眠れなかったとしても、次の日に昼寝をして睡眠時間を調整すればよいと考えれば寝なければならないというプレッシャーも少なくなります。
厚生労働省 e-ヘルスネットのホームページでも生活時間の整え方について発信しているので、興味のある人は内容を確認してみてください。
運動をする
膵臓から分泌されるインスリンの量が不足し、高血糖の状態が続いてしまう病気が糖尿病です。
運動をすると身体の細胞はインスリンを無駄遣いしないようになり、運動でできた筋肉が糖を消費するのでそもそも血糖値が上がりにくくなります。
運動を習慣づけることで積極的に膵臓を休ませられるため、少しの時間でも運動に取り組むようにしてみましょう。
アルコールの飲みすぎで膵臓の気になる症状が現れたら多聞内科クリニックへご相談ください
アルコールの飲みすぎで膵臓に気になる症状が現れたら、多聞内科クリニックの消化器内科にご相談ください。
急性膵炎では臓器不全、慢性膵炎では膵臓がんなど、重い合併症を併発する可能性があります。
なるべく早く治療に取り組むことが合併症の発症を未然に防ぎ、急性膵炎や慢性膵炎を重症化させないことにもつながります。
予約は電話だけではなくWebからでも可能ですので、消化器内科のページをごらんください。
消化器内科 | 高崎市の多聞内科クリニック (tamon-naika.com)
まとめ
膵臓が悪いと出る症状には急性膵炎と慢性膵炎があり患者数は減少しているものの、忘年会や新年会のシーズンでアルコールを飲む機会が増える時期には気を付けた方がよい病気だと言えるでしょう。
膵臓を休ませることで、急性膵炎や慢性膵炎を予防する対策にもつながります。
この記事も参考に、ぜひアルコールの飲み過ぎによる膵臓病への理解を深めてみてください。